コラム「防犯環境をプロデュース」

総合防犯設備士(第01-018号)
永井健三

001「犯罪者は空からはやってこない」

未明の繁華街、足早に通り過ぎる通行人の傍らで、我が物顔で昨夜の残飯を漁る街のギャングスター、そう、烏。この烏対策は無いものか、と問われる。
◆山里の秋の実りを漁るだけでは物足りず、人里まで出没し、人間にも危害を及ぼす勢いの猪。年々その被害は増長している。この猪対策は出来ないか、と問われる。
◆ひったくり、性犯罪など街頭で繰り返される犯罪。侵入盗、強盗などの認知件数は大きく減少しているが、後を絶たない。これらの犯罪者はどんな動線で犯行現場にやってくるのだろうか。烏の如く空から?猪の如く地上から?
◆映画007では、空から降り立って、事に及んでいた。特殊な世界は除外して、犯罪企図者は、地上の道路を通ってやってくる。この動線上に何かの対策を施すことにより「街ごと安全・安心」を構築出来るはず。
◆防犯環境、特に街頭防犯について、このコラムに暫く拙文を投稿したい。しばしのお付合いをお願したい。

002「5歳児が一人でおつかいに行ける街」

「初めてのおつかい」なるタイトルで5歳くらいの子供が独りでおつかいに行き、泣き笑いを誘いながら奮闘し、当初の「任務」を達成するテレビ番組は、1991年から不定期に放映されている。画面の向こうの頑張る5歳児が微笑ましく、一挙手一投足にドキッとしたりホットしたり、涙しながらもその5歳児のお爺ちゃんに成り切って番組に嵌ってしまう
◆画面の隅には、その5歳児が気付かないよう番組スタッフが先回りしたり、後方支援したり、その子の動線を確保し、安全を確保している姿が見え隠れする。大きな買い物バッグを手に、ヨタヨタしながら母親の待つ自宅に帰り着き、自慢げにおつかいの一部始終を話す。演出した番組と知りながら、引き込まれてしまう。そのストリー性が引き付けるのか
◆安全安心な街づくりに微力ながら身を置く筆者は、世の子供達がテレビ局の後方支援がなくとも、独りで「おつかい」に行ける街を創ってみたい。地域の、通りがかりの人々が、「初めてのおつかい」を見守る環境防犯を考えてみたい。

003「音無くやってくるひったくり犯」

去る8月、スピード狂憧れの「富士スピードウェイ」本コースを我が愛車で“疾走”してきた。エコカーのみの出走が許される「エコカーカップ2012」に、大阪と奈良の友と“青春”の想い出つくりと称して駆け参じた
◆地球環境、エネルギー対策が社会の最重要課題の中、エコカーが持て囃されている。ハイブリッド車、EV車など、エコカー補助金に後押しされ、凄い勢いで市場を席捲している。このエコカー、エンジン音が非常に静かで「音なく走る」。歩行者にはエンジン音が聞こえず、車両の接近が分からないほどだ
◆ひったくり犯は、犯行前に「今からひったくりしま~す」とは宣言しない。静かに“そぉ~~と”ターゲットに近づき決行する。バイクの場合、エンジンを止め、接近、決行、エンジン始動、逃走、するらしい。エコカーは「音無く接近する」格好のツールらしい。対策を講じなければ
◆貴重な紙面の一隅を頂き、レース結果報告。クラス優勝!2時間耐久レース9位!総合48位。ナビゲーターとして助手席に座ると「車酔い」する自分がいた。

004「声掛けが街を豊かに、安全にする」

「オハヨウございます!」通りかかりの人に声をかけるが、「・・・」返事は返ってこない。何百、何千人の見知らぬ人々で出会う都会ならまだしも。片田舎の週末の朝、住宅地を通り、一周約3Kmの公園池の周りを巡る、約8Kmのウォーキングコースでも挨拶は返って来ない
◆8Kmのウォーキング中、田舎とはいえ40~50人には出会う。挨拶が返ってくるのは、せいぜい20人。相手から先に挨拶されるのが2~3人。挨拶されると、自分も明るい気分になる。「・・・」では、くら~くなる。
◆「・・・」の人を観察した、その共通する特徴(傾向)は、猫背・目線が下向き・ダラダラと歩く・黒っぽい服装
◆犯罪企図者は、声を掛けられると犯行を諦めるという。非常に乱暴に言えば、声を掛けられても「・・・」は、犯罪者予備軍か
◆声掛け運動で犯罪が抑止でき、人の気持ちを明るくする。お金をかけない「安全・安心な街づくり」「心豊かな街づくり」の原点。声掛けで心豊かで住みたくなる街を創りたい。

005「防犯設備は案山子では困る」

今日(12月24日)はクリスマスイブ、小さな子どもは「サンタさんがプレゼントを持って来てくれる」と信じて早寝する良い子になる。サンタさんの存在が小さな嘘だと知らされるのはずぅっと後のこと
◆「10台の防犯カメラを設置したいが、予算が無いので5台はダミーにして」などのリクエストを頂く事がある。「犯罪企図者と言えども“人”、人を騙すのは良くないですよ。嘘は直ぐ見破られますよ」と答える
◆有効な防犯設備は、犯罪企図者の心理・手口などを熟知し設置されるべきもので、「単なる設備」ではいけない。それに「防犯と言う魂」を注入する事が肝要である
◆防犯機器を取付けただけの「単なる設備」にお目に掛かることがある。それが“電気的に動いた”だけでは「防犯設備」とは言えない。それは「案山子」に過ぎない。その設備には「防犯の魂」が入っていない
◆サンタさんの小さな嘘は微笑ましく許せるが、「案山子の防犯設備」は許せない。「魂が入った防犯設備」を構築し、維持管理する事である。

006「私だけは大丈夫!!懲りない被害者心理」

「10ドル紙幣をすぐ出せるように財布とは別に持つ。歩道はビル側でなく車道側を歩く」もう40年前になろうか、米国のシカゴ市を訪れた時、地元の友人が助言をくれた。
何故?「10ドル紙幣1枚で麻薬がOne-Shotできる、命までは狙わない。ビルとビルの間に引込まれたらこの世の終わりだ」。流石にアルカポネが暗躍した街だと恐怖心を抱いた
◆「バッグは車路側に持たない」「自転車の前カゴには防犯ネットを」「明るい道を選んで」等々、防犯教室で教わる。私は犯罪に遭いたくない、頑張って防犯をするゾォ!の意気込みも時と共に希薄になる。いつの間にか、あんなに怖がったシカゴの街を“安全”と思い始めた
◆「昨日、泥棒にやられた。直ぐ対策を、見積りして!!」矢も盾もたまらない依頼を受ける。2日後「一度やられたから、暫くは来ないだろう」。何をか言わんや、だ
◆犯罪に遭いたくない、しかし「私だけは、大丈夫!!」何処からこの『自信(誤信)』が湧くのだろうか?犯罪発生件数は激減した。しかし、私たちは危険の真中に立っていることを忘れてはならない。

007「自分だけは被害者になりたくない」

町を見下ろす小高い丘に100世帯余りの閑静な住宅地、町の誰もが憧れる立地。その中の一軒が空き巣被害に遭い、対策をとお呼びがあった
◆住宅地への侵入通路は1箇所。40年前に開発され、家庭ごみ収集場などもしっかり管理されている閑静な街並み。住人は高齢化して戸外に出ないのか、出くわすことは無い。住民の「監視の目」は期待できない
◆セキュリティシステム設置を示す「警戒中」ステッカーが約50軒、「猛犬に注意」が10軒余り。年間10件程度が空き巣被害に遭っている。被害に遭うのは、「警戒中」などのステッカーが無い家。犯罪者のターゲットは、侵入対策をしていない50軒に集中すれば良いと言うことか。企図者には実に効率が良い話である
◆「警戒中」の表示は、「自分だけは・・・」の意思表示とは考えたくないが・・・。高齢化地域の盲点は、隣近所の関わりが希薄。高齢者の見守り、防犯・防災・防火対策などを100世帯全員参加でできないものか。街全体のタウンセキュリティを提案することにした。