活躍する防犯の達人- vol.003 平野 富義 さん –

ASES(総合防犯士会)の横顔(1)

エフビーオートメ株式会社
代表取締役 平野富義
総合防犯設備士 第02-0001号

昭和48年7月21日、自動制御機器の販売を目的に産声を上げ意気揚々と船出した我が社、なんとその年の11月にオイルショックが到来、本当にショックだった。すぐに良くなるだろうといわれたがなかなか立ち上がれない状況が続いた。今より悪くなることはない。「山よりでっかい獅子は出ん」と自分に言い聞かせ腹を据えることとした。

創立1年後、もう一つの柱にと考え縁あって防犯機器を取り扱う技術商社として歩み始めた。当初は警備会社やビルメン会社に侵入警報装置用センサーを販売することから始めた。世はこれまでの超音波式検知器から赤外線パッシブ検知器(熱線センサーとも呼ばれる)に変わり始めたころであった。お客様は赤外線パッシブ検知器についてご存じないことから無料で当社主催の技術研修会を何度も実施し特徴、設置方法、タブー集等を一緒に勉強した。

その後親しくなったユーザーからこんなものは作れないかという声が多くなり、特殊な壁掛け用や自立式の警報制御盤を製作し納入することになった。続いてビル等の無人化警備をする上で欠かせない鍵管理装置の開発を手がけた。これまでも鍵管理装置は存在していたが鍵を収納する部分が大きくて壁中が鍵管理装置になっている状況だった。そこで小型でセキュリティ性に優れた、キーカセット方式の鍵管理装置を開発し販売を開始した。この製品は弊社独自の発想で考案、製品化したもので、今もユーザーに愛され続け間もなく誕生して20年になる。そうこうしている間に、セキュリティシステムの提案から施工、メンテナンスを受けるようになり、原子力サイクル施設、核燃料輸送船、防衛庁基地駐屯地、大規模発電所、総合大学、病院、駅ターミナルビル、大規模スーパーマーケット、インテリジェントビルディング等を手がけた。

何度かの海外視察も経験した。忘れられないのが1980年ASIS(American Society For Industrial Security)のマイアミ大会に参加したとき、ニューメキシコ州アルバカーキーにあるサンディア研究所を訪れたときのことだった。広大な敷地に連邦政府、州政府、軍からの予算を受けエネルギー開発の研究をしている原子力エネルギーチームを見学したときの考え方の違い、規模の違いには度肝を抜かれた次第である。いくつかの興味深い考え方を知り、機器も見た。ここは世界中の最新のセンサ等の評価実験をしていることで知る人ぞ知る有名な研究機関である。もちろん最新システムの研究もしている。日本の原子力関係に携わっている人達も大変興味を持ちここを訪問し知識を得たいのだがなかなか見学もママにならないところだった。われわれはASISのバックアップとこのツアーのコーディネーターとして案内していただいた澤紀雄氏のお陰で貴重な見学、勉強ができたのであった。日本に帰って早々にASISの会員申請をし入会した。今や米国の本部会員として日本の会員では古さは5本の指に入るほどで、現在ASISインターナショナル日本支部の副支部長を務めている。

話は変わるが、モニタテレビの画像を警備員が四六時中抜け間なく視ているのは苦痛以外の何もの者でもない。何か良い方法がないものかと考えるようになり思い出したのがサンディア研究所を訪れたとき知ったVMD(ビデオ・モーション・ディテクト )画像による動き検知システムである。いろいろな機器を検討したが大変優秀なシステムと出会った。このシステムは、屋外のいろんな気象条件でも使用することができ、雨、雪、水たまりが存在しても、視野内で木々が揺れていても誤報は出さず、人間大の大きさのものが、ある方向に、あるスピードで、ある距離移動したとき確実に警報を発するのである。これを先に紹介した納入システムに提案し、古くは1992年から提案し稼働し始めた。もう一つ画期的なことは当時からプリアラームシステムも併用していた。

今主流の防犯カメラシステムでいつも思っていることがある。今の日本の考え方は防犯カメラとは言うが本当に防犯カメラだろうか?カメラが付いていることで多少の抑止効果はあるものの、侵入してはいけないところに侵入しても警報が鳴るわけではない。ただ録画しているに過ぎない。そして有事の際、録画画像を見て検証するという使い方になっている。防犯カメラというなら侵入してはいけないところに侵入したとき、ある部分に接近した時など自動的にアラームを出すべきである。現在のデジタルレコーダはこの機能を持っているのだから、その電気出力に威嚇ライトや音声警告器等を接続してマンションの風除室に人が入ってきたとき、フラッシュライトが点滅し、さらにここは関係者以外は入らないでくださいと自動警告をすることができるのである。さらに風除室にモニタテレビを付け風除室に入って来た姿を写し出すことにより犯罪企図者にここは他のマンションと様子が違う、何か仕掛けがしてある。このまま中に入るとどんな仕掛けがしてあるかわからないと思わせ犯行を思いとどまらせるのが防犯カメラではないだろうか?是非このVMD機能を活用して真の防犯カメラシステムにしようではありませんか?このことが大変防犯に有効だと考えています。

一方、超零細企業の経営者である私が社会への貢献として、古くは昭和52年、近畿防犯設備業協会(後に東京の防犯警報工業会とがベースになり昭和61年(社)日本防犯設備協会の誕生を見る)活動に始まり、現(公社)日本防犯設備協会活動を含めると約34年間にわたる協会活動になる。今まで勉強してきたこと、得た知識等をふんだんに発揮破棄し「総合防犯士会でなければできないこと、総合防犯士会だからこそできること」等を追求することこそわれわれ総合防犯士会の存在の意義と考えている。

われわれ総合防犯士会の英知を結集してソフト・ハード両面でをもってして犯罪防止を通して世直しのお手伝いができればと考えている。

いずれにしても、いつの世も悪事を働こうとする犯罪企図者とそれらの脅威から対象物を護り悪事を働かせないという立場の人達との知恵比べ、仕掛け比べ、根比べと言ったところでしょうか。